03.2023 Pernes-les-Fontaines

 
 

3月の買い付けは、フランスのストライキと共にはじまりました。
どうなる事かと少し心配しながらのフライトでしたが、途中、アラスカ辺りで目が覚めて飛行機の遮光窓を上げると外は満月。そして目を凝らしてみるとそこには淡い緑色のひかりがゆらゆらと揺らめく様子が。
それは初めて観るオーロラでした。
自然界の美しい現象が目の前に広がり、その景色をみながら、ストライキと同時にはじまる買付もきっと大丈夫と思うのでした。

フランスに着き、良い事ばかりではありませんでしたが、初めに感じた ”きっと大丈夫” は間違えではなく、移動はストライキの影響を受けながらも、結果、予定通り。順調に進みます。

買付の旅は、Paris, London, そしてSouth of France, そして最後はNormandyへ。
パリからはじまり、北へ上がり、南へ下り、そしてパリへ戻り、また北へ上がり、最後、パリへ戻るという。
移動した距離は、いったい何キロだったのだろうかと思います。

今回はタイトなスケジュールの中でも、いくつか愉しみにしていたことがありました。

その一つが、南フランスでの乗馬体験でした。

買付は朝が多いので、午前中は買付へ、そして午後は梱包作業や事務処理を。
そして夕方の落ち着いた時間に、この日は愉しみにしていた乗馬へ。

牧草地が広がる南仏。草を食べてもらうために、馬を飼うことが多いそうです。
その馬たちを穏やかに育てているのが、小柄な女性のフレデリック。
彼女一人で、何頭もの馬やポニーを躾け、羊にネコに犬たちと、みんなの世話をしながら、馬たちのそばに小さな小屋を建てて、365日、一緒に暮らしています。
夏は暑いし、冬はとても寒いと彼女は話していましたが、馬たちから離れることはできないのだそう。

動物たちを見ていると、フレデリックの人柄もなんとなく伝わってきます。

動物たちはみんな人懐っこく、嬉しそうに私たち人間の周りに集まってきて、ネコは足元に体をすり寄せてきたり、犬は元気に遊ぼう!とじゃれてきたり、馬は顔を寄せてきたり。きっと彼女に育ててもらっているから、こんなにみんな愛嬌があるのかなと。
そして、動物たちのおかげで、私は仕事のプレッシャーや疲れが飛ぶように癒されるのです。

乗馬の前に、乗せてくれるスモーキー(馬)との顔合わせで、よろしくお願いしますと思いを込めて、体をブラッシングすることからはじまります。
スモーキーも私の手に身を委ねてくれブラシを掛けさせてくれます。そして近くで見る瞳は美しく優しくて、純粋なものが心にグッと入ってきます。
時々、顔を寄せ、わたしのセーターをむしゃむしゃと口にいれたり。
少し仲良くなれたら、乗馬をして散歩へ。

フレデリックが誘導してくれるなか、林檎畑が広がる農地をゆっくり散歩する夕暮れ。
いつもと目線が変わり広がる景色、スモーキーのあたたかな体温を感じながら、歩くリズムが心地よく体に伝わり、幸せな時間を過ごすのでした。
そして初めての体験は未だ余韻冷めやらぬままです。

馬たち中の一頭にはもうすぐ赤ちゃんが生まれるそう。
”次に来た時には赤ちゃん馬にも会えるよ”とフレデリックが言いました。
また馬たちに、そして赤ちゃん馬に会える日を楽しみに、再び南仏へ行ける日を楽しみにしたいと思います。

買付業務の合間に、ミュゼへ出かけて美しいものを心に入れたりしますが、動物たちとの触れ合いは、それはまた特別な美しいギフトを頂いたような。。心に残るものでした。

kanako yamane