03.2023 en Normandie
今年の3月の終わり、アントニスの田舎のアトリエへ誘って頂き、ノルマンディーへ向かいました。
北フランスは水が豊かで、生い茂る草たちも贅沢なほどに水分を含み、色濃くみずみずしく、南フランスの景色とはまた異なる美しさが広がっていました。
リンゴ農家の納屋を8年かけてアントニス自身が改修した家は木の温かみで包まれ、素朴さと美しさが交じり合う空間は、アントニスの手から生まれる作品と同じであることを直ぐに感じました。
3月の終わりのノルマンディーはまだ寒く、暖炉で薪を焚く香りが部屋に広がり、ワインやチーズを片手にゆっくりと流れる時間の中で話をしたり、食事をしたり。
素朴で静かな田舎の暮らしをとても贅沢に感じる夜を過ごしました。
料理を盛るのはアントニスが集めた様々なヨーロッパの古の器だったり、アーティストの器だったり、もちろんアントニスの木の器にも。
シンプルな料理は特にアントニスの木の器によく合うように感じます。
写真にあるバターが盛られた一枚の割れたプレート。もともとは丸く仕上げられた木の器。使い続けるうちに割れてしまっても、役割が終わったわけではなく、それがその木の個性だとして使い続けられている様子からも、彼の考え方や人柄を感じることができます。
翌日の朝、アントニスと彼の奥様、Iro(犬)と私たちは1時間半ほど、ノルマンディーの小道を散歩するのでした。
生い茂る草たち、ゴロゴロと転がる小さな石ころたち、たっぷりと水を含んだ土の上を長靴をはいて1時間半。
歩きにくい道なのに、体はとても軽やか。コンクリートの上を歩くときに感じるものとは全く異なります。街の暮らしに慣れて、忘れてしまっている感覚や感触がここにはたくさんあり、私の心や体は自然のチカラに癒されていきました。
散歩の後のランチはセージのパスタ。
庭先のセージを摘んでパスタに和えるシンプルな料理。アントニスの木の器にたっぷりと盛り付けられたパスタはセージの香が広がりとても美味しく、器にもよく合い、日本へ帰り最初にした料理はアントニスが作ってくれたパスタの再現でした。
自然と包まれ暮らす様子に憧れを抱きながら、
アントニスの美しい世界に触れさせてもらえた一泊二日の短く濃い時間。
振り返ると書き留めておきたいことはまだまだたくさんありますが、続きは6月の展示会で、ご覧頂く器と共にお話ができたらと思います。
6/2 fri から始まる
Antonis cardew Exhibition
たくさんの皆さまに楽しんで頂けますように。